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エクスペルト誌　特別レポート

ロシアの一流と言われる週刊誌「エクスペルト」の2月末の号に御大の去就に関する記事が載りました。
モスクワのゆたかさんからレポートをいただきましたので、ゆたかさんのコメントを交えながらご紹介します。

“スヴェトラーノフ　−　我々は彼を失った”と言う表題、「スヴェトラーノフは二度とロシアのステージには戻らぬ覚悟で先週外国へ去って行った」との副題で、写真入り１ページを割いて報道されています。
※写真は同誌に掲載されたもの。99年12月にボリショイを振った際のゲネプロ時のものと思われる。

“彼は空港のロビーに虚脱した表情で立ち尽くし、ただ呆然とモスクワ／パリ行きの表示を見上げていた。
辺りの景色も人声も無視してシェレメチヴォ第二空港に立っていた。

「エフゲニー・フィヨードロビッチ、行ってはいけない。貴方にはまだここでやるべき事が残って居るではないか！」との友人の呼びかけも彼の耳には入らぬ様であった。

「裏切られた。皆に裏切られた」　「長年にわたり共同して芸術を創作してきたオーケストラの友人達に、
スヴェトラーノフ家では息子同然の扱いを受けていた若い指揮者にも、演奏会で拍手をしてくれた聴衆も
マスコミの一方的なバッシングが始まると彼に背を向けてしまった」
去り行く72歳の老指揮者の心を去来する思いはこの様なものであったであろう。

「さあ行こう」 、思い直したように友人の肩を叩き、夫人の手を取り、彼は税関の中に消えていった”

※ここに書かれているパリへの出発は、御大がゆたかさん宅を訪れた次の日のことである。

このような書き出しで始まる記事は、事ここに至るまでの推移を述べ、かなりオーケストラ側に厳しい論調で結んでいる。

その概要は・・・、

• 昨年春、オケとスヴェトラーノフの間に海外公演の取り止めに関し食い違いがあり、これが抗争に発展し
  た。　（エクスペルトの記者によれば、スヴェトラーノフは従来から音楽以外の事はまったく関心が無く、
  スポンサーの応募や海外公演にも無関心で、時には音楽家にしか通用しない論理で割の良い仕事を
  断ったこともあり、団員の不満がたまっていた、と解説がある）
  その場で組合が結成され、スヴェトラーノフへの長い抗争が始まった。

• スヴェトラーノフは文化省に対し新しい提案を行ったが、オケ側はことごとくこれに反対した。
  例えば新しい主席指揮者の起用を提案したが、これはオケ側からも省側からも拒絶された。
  また代行を置く案も提案されたが、候補者が脅迫されたりしてお流れとなった。

• これに加えて最近ストライキ委員会が組織され、沈黙を守るスヴェトラーノフに対してマスコミを通じての
  一方的なプロパガンダ戦争が仕掛けられた。 一連のキャンペーンはオケ側の意見のみを取り上げた
  一方的なものであり、反対意見を寄せようものなら電話攻勢に遭い、訴訟への脅しも見られた。

• 文化省大臣が調停を買って出て、ある提案を行った際にも、大臣が「スヴェトラーノフがいなくなると、
  このオーケストラの水準が落ちるのが心配だ」と言っただけなのに、「名誉毀損の訴訟を起こす」と脅さ
  れて提案を引いた経緯がある。

• この様な事態に対し、シナイスキー、ラザレフ、ゲルギエフといった著名な指揮者は、このオーケストラと
  一緒に仕事をする事を拒否している。

• 一連の騒ぎを通じ、このオーケストラはメンバーを失いつつあり、現在は７５％の充足度。不足はエキスト
  ラに頼らざるを得ない状態で、必然的に最近の演奏のレヴェルは“フェスティヴァル オーケストラ”の域に
  まで下がっている。
  オケの名前からもスヴェトラーノフが消えて“State Academic Symphonic Orchestra Of Russian
  Federation ”と言うものになった。
  この様な集団に税金から年間250万ルーブル（約一千万円….少ないですね）の補助金を出す必要がある
  のか疑問である。

• オケのストライキのメンバーが、スヴェトラーノフが2月25日に振る事になっていたモスクワ・フィルに対し
  中傷を仕掛けた時に、スヴェトラーノフの堪忍袋の緒が切れ、今回の次第となったという。

最後に見送った友人（サーシャだと思われます）に対するスヴェトラーノフの言葉で記事は締めくくられています。

「脅迫に屈した訳ではない。 果てしない抗争に疲れてしまったのだ」